ブリッジルーツの日本・中国・韓国見聞録

韓国と日本の商法・会社法を比較
第4回 韓国商法第17条~第21条

弁護士法人BridgeRootsブリッジルーツ
弁護士 大塚 陽介

※本記事は亜州ビジネス2019年6月24日第2117号に掲載されたものです。

 我が国にとって一番の“お隣さん”であり“ライバル”でもある韓国。東アジアでの経済活動を考える上で、韓国企業との取引や韓国進出等の検討は避けて通れない課題と言えるのではないでしょうか。韓国関連のビジネスを考えるに当たって収集しておきたい情報やノウハウ等は数えきれないほどですが、ここでは法律面から韓国を掘り下げてみましょう。
 「それじゃ、どんな法律から見ていこうか?」と悩みますが、ビジネスの世界の基本法といえばやはり「会社法」ではないでしょうか。我が国では商法大改正により新たに「会社法」が成立し、株式会社をはじめとする“会社”の基本法となりましたが、韓国では「商法」がその役割を担っています。そこで、本稿では、韓国商法について、我が国の会社法に相当する第3編にビジネスの基本的なルールを定めた第1~2編も加えて、我が国の法律と比較しながら逐条「怪」説していきます

 

韓国商法/第1編 総則/第3章 商業使用人

17条(支配人の代理権)

1 商業使用人は、営業主の許諾なくして、自己若しくは第三者の計算において営業主の部類に属する取引をし、または会社の無限責任社員、理事若しくは他の商人の使用人となることができない。

2 商業使用人が前項の規定に違反して取引をした場合において、その取引が自己の計算においてしたものであるときは、営業主は、これを営業の計算においてしたものとみなし、第三者の計算においてしたものであるときは、使用人に対しこれによる利得の譲渡を請求することができる。

3 前項の規定は、営業主から使用人に対してする契約の解除又は損害賠償の請求を妨げない。

4 第2項に規定する権利は、営業主がその取引を知った日から2週間を経過し、またはその取引があった日から1年を経過すれば消滅する。

日本商法 第23条(支配人の競業の禁止)

1 支配人は、商人の許可を受けなければ、次に掲げる行為をしてはならない。

 一 自ら営業を行うこと。

 二 自己又は第三者のためにその商人の営業の部類に属する取引をすること。

 三 他の商人又は会社若しくは外国会社の使用人となること。

 四 会社の取締役、執行役又は業務を執行する社員となること。

2 支配人が前項の規定に違反して同項第二号に掲げる行為をしたときは、当該行為によって支配人又は第三者が得た利益の額は、商人に生じた損害の額と推定する。

(※ 日本会社法第12条にも同様の規定が存する。)

(怪説)

日本では“支配人”(登記が必要/レストランやホテルの支配人とは異なる法律上の用語)のみが競業禁止の規制を受けることになるのだけれど、韓国商法では“支配人”に限られず、すべての“商業使用人”(雇われている従業員)が競業禁止の規制を受けるという、非常にラディカルな内容となってます。にわかに信じ難いところですが、韓国商法につき「支配人や商業使用人の規定が実際と乖離している」などと評される所以なのかな~?

 

韓国商法/第1編 総則/第4章 商号

18条(商号選定の自由)

 商人は、その姓名その他の名称をもって商号を定めることができる。

日本商法 第11条(商号の選定)

1 商人(会社及び外国会社を除く。以下この編において同じ。)は、その氏、氏名その他の名称をもってその商号とすることができる。

(怪説)

「商号」というのは、会社名であり、個人事業主の“屋号”です。

韓国でも日本でも、個人事業主は氏名だけでなくその他の名称(例:〇〇商店)も商号とすることができます(商号選定自由の原則)。

 

韓国商法/第1編 総則/第4章 商号

19条(会社の商号)

  会社の商号には、その種類により、合名会社、合資会社、有限責任会社、株式会社又は有限会社の文字を使用しなければならない。

日本会社法 第6条(商号)

1 会社は、その名称を商号とする。

2 会社は、株式会社、合名会社、合資会社又は合同会社の種類に従い、それぞれその商号中に株式会社、合名会社、合資会社又は合同会社という文字を用いなければならない。

3 会社は、その商号中に、他の種類の会社であると誤認されるおそれのある文字を用いてはならない。

(怪説)

会社の商号(名称)には、株式会社なら「株式会社」と、合名会社なら「合名会社」と。そういった会社の種別を入れなければなりません。これも日韓共通ですね。

 

韓国商法/第1編 総則/第4章 商号

20条(会社商号の不当使用の禁止)

  会社でなければ、商号に会社であることを表示する文字を使用することができない。会社の営業を譲り受けた場合にも、同様とする。

日本会社法 第7条(会社と誤認させる名称等の使用の禁止)

  会社でない者は、その名称又は商号中に、会社であると誤認されるおそれのある文字を用いてはならない。

(怪説)

会社でない者・団体等は、その商号・名称の中に「会社(株式会社や合名会社など)」と誤認されるような文字を使用することができません。これも日韓共通です。

 

韓国商法/第1編 総則/第4章 商号

21条(商号の単一性)

1 同一の営業には、単一の商号を使用しなければならない。

2 支店の商号には、本店との従属関係を表示しなければならない。

日本商法・日本会社法とも、対応する条文はない。

(怪説)

「商号選定自由の原則」(韓国商法第18条)の例外の1つで、「商号単一の原則」と呼ばれます。

日本商法には同様の規定がありませんが、日本においても、解釈により「個人事業主の場合、同一の営業では1個の商号しか使用できない」とされているので、この意味においては日韓共通の法規制と言えます。


本稿は、あくまでも一般的な法解釈の動向のご説明にとどまるものですので、いかなる意味においても、法的見解を表明し、あるいは法的助言や鑑定等のサービスをご提供するものではありません。