ブリッジルーツの日本・中国・韓国見聞録

【第145回】中国進出・新時代へ:「外商投資法」の解説

弁護士法人BridgeRootsブリッジルーツ
代表弁護士 橋本 吉文
(執筆協力 郝 月)

※本記事は亜州ビジネスCHINA2019年6 月3 日第2102号に掲載されたものです。

 2019年3月15日、「外商投資法」が第十三期全国人民代表大会第二回会議で可決され、2020年1月1日より施行されます。同法の施行により、中国進出は今後新時代へ突入していくものと思われます。今回は、「外商投資法」について、従前の「外資三法」との違いに着目しながら解説します。

一、 立法の経緯及び法的な位置づけ
 中国の改革開放当初、外資(香港、台湾、マカオを含む)による中国への投資進出活動を管理・規制するため、「中外合弁企業法」(1979年制定)、「外資企業法」(1986年制定)、「中外合作経営企業法」(1988年制定)(以下、併せて「外資三法」という)の三つの法律が制定されました。「外資三法」は、名称の通り、投資先企業の形態による外商投資活動を規制する「企業法」ですが、近年中国への投資活動が多様化し、現在の国際情勢及び投資状況に適合しなくなってきました。
 そこで、2015年1月、中国商務部は、「外国投資法(意見募集稿)」を公表し、外資規制に関する法律の統一、行政手続きの簡素化、外資資本の参入障壁の緩和を目指しました。今回可決された「外商投資法」は、「外国投資法(意見募集稿)」を踏襲し、「企業法」に取って代わる「投資法」として、投資形態ではなく、投資活動自体に着目して、全般的に管理・規定しています。同法の施行により、「外資三法」は同時に廃止されることになります。ただし、外資企業の組織形態の変更については、施行から5年間の過渡期が設けられていますので、必ずしも直ちに組織機構・ガバナンス体制や合弁契約・定款の変更が必須となるわけではありません。投資先の組織構築などに関する事項は、1993年に制定された「会社法」及び1997年に制定された「パートナーシップ企業法」などの企業法に委ねられます。

二、 規定内容の概要
1、 ネガティブリスト制度
今回「外商投資法」は、外資規制を更に緩和するため、外資規制において、ネガティブリスト制度を導入しました。投資分野については、そのリストに記載されていない限り、国民待遇を原則にし、外商投資を中国国内投資と同様に取り扱うと定められています。ネガティブリストに記載されている分野でも、外国投資者による投資活動が完全に禁止される場合を除き、一定の条件の下で(外資持株比率の制限など)、投資することができます。新しい詳細なネガティブリストは、中国国務院商務部門により制定されているところですが、ネガティブリストに掲げられる産業は更に縮小すると予想されます。 

2、 外商投資の保護
 外商投資者の権益を保証・保護するため、下記のように、いくつかの措置が定められました。
  1. (第20条)外商投資企業に対して収用を行わないこと;
  2. (第21条)外国投資者の中国での出資、利益、資本収益、知的財産権使用料、法律   に基づいて獲得した補償金・賠償金などは、法律に従って人民元もしくは外貨で海外に送金ができること;
  3. (第22条)外国投資者及び外商投資企業の知的財産権を保護し、外商投資の過程における技術提携の条件は各投資者間の協議により確定し、行政機関及びその職員は行政手段により技術譲渡を強制してはならないこと;
  4. (第23条)各級政府及びその他関連部門は法律に違反して外商投資企業の利益を減損し、義務を増加してはならないこと;
  5. (第24条)地方政府及びその他関連部門は外国投資者及び外商投資企業に対して、約束した政策及び締結した契約を厳格に履行しなければならないこと;
  6. (第25条)国は外商投資企業のための苦情申立の処理の仕組みを確立し、外商投資企業の提出する問題を速やかに解決すること。

三、 結び
 米中貿易摩擦が激化しつつあり、米国が制裁関税などの保守的・閉鎖的な措置を講じる一方、中国は更なる積極的・開放的な姿勢を取っています。米国等から、知的財産権の不保護、海外送金の不自由、行政手段の不安定等の批判を受け、中国は、今回の法改正をきっかけに、投資利益の保護、資本の流動自由等、複数の政策を打ち出しました。今後外資企業は、その組織形態を問わず、統一的に「外商投資法」の適用を受けることとなり、中国の外資規制は新しい時代に入ることとなるでしょう。
以上

ネガティブリストについては、2018年12月21日に中国国家発展改革委員会及び商務部により公布された、上海などの自由貿易区を対象とした「自由貿易区外商投資参入特別管理措置(2018版)」をご参考にしてください。