ブリッジルーツの日本・中国・韓国見聞録

韓国と日本の商法・会社法を比較
第3回 韓国商法第11条~第16条

弁護士法人BridgeRootsブリッジルーツ
弁護士 大塚 陽介

※本記事は亜州ビジネスCHINA2019年1月28日第2021号に掲載されたものです。

 我が国にとって一番の“お隣さん”であり“ライバル”でもある韓国。東アジアでの経済活動を考える上で、韓国企業との取引や韓国進出等の検討は避けて通れない課題と言えるのではないでしょうか。韓国関連のビジネスを考えるに当たって収集しておきたい情報やノウハウ等は数えきれないほどですが、ここでは法律面から韓国を掘り下げてみましょう。
 「それじゃ、どんな法律から見ていこうか?」と悩みますが、ビジネスの世界の基本法といえばやはり「会社法」ではないでしょうか。我が国では商法大改正により新たに「会社法」が成立し、株式会社をはじめとする“会社”の基本法となりましたが、韓国では「商法」がその役割を担っています。そこで、本稿では、韓国商法について、我が国の会社法に相当する第3編にビジネスの基本的なルールを定めた第1~2編も加えて、我が国の法律と比較しながら逐条「怪」説していきます。

韓国商法/第1編 総則/第3章 商業使用人

11条(支配人の代理権

1 支配人は、営業主に代わってその営業に関する一切の裁判上又は裁判外の行為をすることができる。
2 支配人は、支配人でない店員その他の使用人を選任し、又は解任することができる。
3 支配人の代理権に加えた制限は、善意の第三者に対抗することができない。

日本商法 第21条(支配人の代理権
1 支配人は、商人に代わってその営業に関する一切の裁判上又は裁判外の行為をする権限を有する。
2 支配人は、他の使用人を選任し、又は解任することができる。
3 支配人の代理権に加えた制限は、善意の第三者に対抗することができない。
(※ 日本会社法第11条にも同様の規定が存する。)


(怪説)
◇ ここにいう「支配人」とは、いわゆる“ホテルの支配人”とか“高級レストランの支配人”とは異なる法律上の意味となります(もちろん、“ホテルの支配人”が法律上の「支配人」である場合もあります)。法律上の支配人とは「広汎なる営業に関する一切の裁判上又は裁判外の行為をなす権利を有するもの」などとされており、韓国法・日本法とも第1項はトートロジーのような条文となっています。
◇ 結局のところ、実際的な意義としては、「支配人として登記しておけば、社長の代わりに裁判に出席できる」といったところでしょうか。実際に(法律上の)支配人を設置している会社は少なく、日韓ともに「弁護士に依頼しないで、従業員(=支配人)を裁判所に出頭させる」という必要性のある会社(債権取立など?)が多いと言われています。


韓国商法/第1編 総則/第3章 商業使用人

12条(共同支配人
1 商人は、数人の支配人に共同で代理権を行使させることができる。
2 前項の場合において、支配人の一人に対して行った意思表示は、営業主に対してその効力を生ずる。

※ 日本商法・日本会社法とも、対応する条文はない。

(怪説)
◇ 「共同支配人」とは、「一人だけでやらせると無茶苦茶をする危険があるので、二人(あるいはそれ以上)が揃ってやらなければ権限を行使できないことにする」という制度で、支配人による権限濫用を防止するためのものです。かつては日本商法においても「共同支配人」の制度がありましたが、2005年の商法改正で廃止されています。
◇ 「共同支配人」と類似する制度として「共同代表取締役」というものもあります。こちらも日本商法が会社法に改正されたタイミングで廃止されています。注意すべきは「代表取締役が複数いる会社は“共同代表取締役”制度を採用している!」ということにはならない点です。単に代表取締役が複数いるだけの場合には、一人一人がそれぞれ単独で代表権限を行使することができます。


韓国商法/第1編 総則/第3章 商業使用人

13条(支配人の登記
 商人は、支配人の選任及びその代理権の消滅について、その支配人を置いた本店又は支店の所在地において登記しなければならない。前条第1項に規定する事項及びその変更についても、同様とする。

日本商法 第22条(支配人の登記)
 商人が支配人を選任したときは、その登記をしなければならない。支配人の代理権の消滅についても、同様とする。

(※ 日本会社法第918条にも同様の規定が存する。)


(怪説)
◇ 前述のとおり支配人制度を採用する会社は少ないと思いますが、仮に採用する場合には、日韓ともに登記が必要です。

韓国商法/第1編 総則/第3章 商業使用人

14条(表見支配人

1 本店又は支店の営業主任者その他支配人と認めるべき名称を付した使用人は、本店又は支店の支配人と同一の権限があるものとみなす。ただし、裁判上の行為に関しては、この限りでない。

2 前項の規定は、相手方が悪意であったときは、この限りでない。

日本商法 第24条(表見支配人)
 商人の営業所の営業の主任者であることを示す名称を付した使用人は、当該営業所の営業に関し、一切の裁判外の行為をする権限を有するものとみなす。ただし、相手方が悪意であったときは、この限りでない。

(※ 日本会社法第13条にも同様の規定が存する。)


(怪説)
◇ 営業の責任者みたいな役職名(支店長とか?)を与えられた従業員は、法律上の「支配人」でなくても「支配人」と同様の権限があるものとみなされます。ただ、法律上の「支配人」(登記も必要です)でないと、裁判所に当事者として出廷することはできません。日韓とも同様の規定です。

韓国商法/第1編 総則/第3章 商業使用人

第15条(部分的包括代理権を有する使用人)

1 営業に関するある種類又は特定の事項の委任を受けた使用人は、当該事項に関する一切の裁判外の行為をする権限を有する。

2 第11条第3項の規定は、前項の場合について準用する。

日本商法 第25条(ある種類又は特定の事項の委任を受けた使用人)

1 商人の営業に関するある種類又は特定の事項の委任を受けた使用人は、当該事項に関する一切の裁判外の行為をする権限を有する。

2 前項の使用人の代理権に加えた制限は、善意の第三者に対抗することができない。

(※ 日本会社法第14条にも同様の規定が存する。)


(怪説)
◇ 本条は、営業部長とか購買課長とかいった特定の事項について会社から権限を与えられたふうな役職名の従業員について、(特定の支店についての包括的な権限を与えられた「支配人」とは異なり)当該「特定の事項」についての包括的な権限を定めたものです。日韓とも同様の規定です。

6韓国商法/第1編 総則/第3章 商業使用人

第16条(物販売店舗の使用人

1 物品を販売する店舗の使用人は、その販売に関する一切の権限を有するものとみなす。

2 第14条第2項の規定は、前項の場合について準用する。

日本商法 第26条(物品の販売等を目的とする店舗の使用人
 物品の販売等(販売、賃貸その他これらに類する行為をいう。以下この条において同じ。)を目的とする店舗の使用人は、その店舗に在る物品の販売等をする権限を有するものとみなす。ただし、相手方が悪意であったときは、この限りでない。


(怪説)
◇ 物販店の“お店の従業員”は、お店の品物を販売する権限があるものとみなす旨の規定です。当然ちゃ当然のことなのですが、買い物するお客さんの信頼を保護する趣旨で規定されています。日韓とも同様の規定です。

※ 本稿は、あくまでも一般的な法解釈の動向のご説明にとどまるものですので、いかなる意味においても、法的見解を表明し、あるいは法的助言や鑑定等のサービスをご提供するものではありません。