ブリッジルーツの日本・中国・韓国見聞録

韓国と日本の商法・会社法を比較
第2回 韓国商法第6条~第10条

弁護士法人BridgeRootsブリッジルーツ
弁護士 大塚 陽介

※本記事は亜州ビジネス2018年11月19日第1978号に掲載されたものです。

 我が国にとって一番の“お隣さん”であり“ライバル”でもある韓国。東アジアでの経済活動を考える上で、韓国企業との取引や韓国進出等の検討は避けて通れない課題と言えるのではないでしょうか。韓国関連のビジネスを考えるに当たって収集しておきたい情報やノウハウ等は数えきれないほどですが、ここでは法律面から韓国を掘り下げてみましょう。
 「それじゃ、どんな法律から見ていこうか?」と悩みますが、ビジネスの世界の基本法といえばやはり「会社法」ではないでしょうか。我が国では商法大改正により新たに「会社法」が成立し、株式会社をはじめとする“会社”の基本法となりましたが、韓国では「商法」がその役割を担っています。そこで、本稿では、韓国商法について、我が国の会社法に相当する第3編にビジネスの基本的なルールを定めた第1~2編も加えて、我が国の法律と比較しながら逐条「怪」説していきます

韓国商法/第1編 総則/第2章 商人

6条(無能力者の営業と登記)

 未成年者又は限定治産者が法定代理人の許諾を得て営業をするときは、登記をしなければならない。

日本商法 第5条(未成年者登記)

未成年者が前条の営業を行うときは、その登記をしなければならない。。

(怪説)
◇ 韓国商法にいう「限定治産者」とは、日本でいうところの「被保佐人」です。韓国商法第8条に出てくる「禁治産者」は、日本でいうところの「成年被後見人」です。なお、韓国でも2011年の民法改正で成年後見制度が導入されています。
◇ 日本商法においては、被保佐人による営業の登記に関する規定がないようです。

韓国商法/第1編 総則/第2章 商人

7条(無能力者と無限責任社員)

 未成年者又は限定治産者が法定代理人の許諾を得て会社の無限責任社員となったときは、その社員資格による行為に関しては能力者とみなす。

日本商法 第584条(公法人の商行為)

  持分会社の無限責任社員となることを許された未成年者は、社員の資格に基づく行為に関しては、行為能力者とみなす。

(怪説)
◇ 韓国でも日本でも、未成年者は法定代理人の許諾があれば(持分)会社の無限責任社員となることができ、当該社員として行った行為については“大人”と同等に扱われます。ただ、日本の商法や会社法では、被保佐人に関する同様の規定がないようです。

韓国商法/第1編 総則/第2章 商人

8条(法定代理人による営業の代理)

 1 法定代理人が未成年者、限定治産者又は禁治産者のために営業をするときは、登記をしなければならない。

 2 法定代理人の代理権に加えた制限は、善意の第三者に対抗することができない。。

日本商法 第6条(後見人登記)

1 後見人が被後見人のために第4条の営業を行うときは、その登記をしなければならない。

2 後見人の代理権に加えた制限は、善意の第三者に対抗することができない。

(怪説)
◇日本商法では、法定代理人が未成年者のために営業をする場合の登記に関する規定がないようです。なお、日本の保佐人は、代理権付与の審判がなされない限り、被保佐人の法定代理人とはなりません。

韓国商法/第1編 総則/第2章 商人

9条(小商人)

支配人、商号、商業帳簿及び商業登記に関する規定は、小商人には適用しない。

日本商法 第7条(小商人)

第5条、前条、次章、第11条第2項、第15条第2項、第17条第2項前段、第5章及び第22条の規定は、小商人(商人のうち、法務省令で定めるその営業のために使用する財産の価額が法務省令で定める金額を超えないものをいう。)については、適用しない。

(怪説)
◇「小商人」とは、ざっくり言うと規模の小さな事業者のことで、日本であれば、営業のための資産が50万円以下の場合となります。小商人には負担が重かったりするので、日韓ともに商業登記とか商業帳簿等の規定が適用されません。

韓国商法/第1編 総則/第3章 商業使用人

10条(支配人の選任)

商人は、支配人を選任し、本店又は支店において営業させることができる。

日本商法 第20条(支配人)

商人は、支配人を選任し、その営業所において、その営業を行わせることができる。

(怪説)
◇「商業使用人」とは要するに従業員で、「支配人」とは(ホテルの支配人とはまた別で)営業に関するものなら営業主に代わって何でもできる人のことです。
◇韓国でも日本でも、商人は「何でもできる支配人」に営業を行わせることができます(詳細は韓国商法第11条以下で!)。

※ 本稿は、あくまでも一般的な法解釈の動向のご説明にとどまるものですので、いかなる意味においても、法的見解を表明し、あるいは法的助言や鑑定等のサービスをご提供するものではありません。