ブリッジルーツの日本・中国・韓国見聞録

弁護士法人Bridge Rootsブリッジルーツ
中国人弁護士 厳 逸文

※本記事は亜州ビジネス2018年9月18日第1938号に掲載されたものです。

【第132回】中国EC市場の法律事情

 「淘宝(タオバオ)」及び「Tmall(天猫)」という名前を聞いたことがありますでしょうか?これらは、日本の「楽天」のような、中国で有名なアリババグループ傘下の通販サイトです。中国人の10人中9人が、この二つの通販サイトで買い物をしたことがあると言われています。近年、中国人は通販サイトで買い物をする習慣が根付いてきたため、中国市場を狙って商品を販売したい外国企業は、以前のように実体店舗からビジネスを展開することが少なくなりました。今では、中国の通販サイトと提携して展開していくことが多くなり、中国越境EC市場に対する関心も高まってきました。EC市場からビジネスをスタートする場合、短期間且つ低コストで中国全土に普及させることができるため、非常に「お得」なビジネス展開手段と言えます。今回は、中国EC市場の法律事情を説明します。

1.商品の取り扱いに対する規制について
 中国のEC市場へ商品を輸出する場合、商品の取り扱いに関して、下記三つのレベルの規制がありますので、中国EC市場で商品を販売しようとする場合は、次の規制を確認することをお勧めします。

(1)一般輸入商品の規制
 ご存知のとおり、中国へ商品を輸入する場合、輸入禁止の商品があるため、「輸入禁止貨物目録」に輸入しようとする商品が記載されているか否かを確認する必要があります。

(2)通販サイトによる規制
 各通販サイト(例えば、「京東」や「タオバオ」等)では規制取扱商品につき関連の管理規定を定めているため、これら通販サイトで商品を販売しようとする場合は、各通販サイトの管理規定を確認する必要があります。

(3)免税リストの確認
 中国において越境EC市場が盛り上がってきた大きな理由は、税金が課されなかったため、輸入商品の市場競争力が高いということでした。しかし、その後、EC事業者(特に海外にいる個人のEC事業者)に対する課税の声が高まったため、2016年4月、越境EC小売輸入品リスト(ポジティブリスト)が公布されました。同リストに記載された商品は、一定の金額の限度を超えない限り、免税である一方、記載されなかった商品は、一般輸入商品と同様に課税されるようになりました。税金が課されるか否かは、販売コストの計算や商品価格の決定等に大きな影響を与えますので、中国のEC市場へ進出する場合は、同リストを確認することもお勧めします。

2.データ制約に関する規制について
 以前の回でも説明したことがあるように、中国においては個人情報に対する保護が非常に弱いと批判されているため、この現状を改善するために、インターネットサービスの分野を始め、個人情報に対する保護の法規制が始まりました。
 2017年6月1日、「インターネット安全法」の施行は、この法規制の重要な一つです。同法は、中国企業及び中国に子会社を持つ外資系企業に限らず、越境EC事業者を行う海外企業も規制の対象とされています。また、同法第37条では、「重要情報インフラの運営者は、中国国内での運営において収集および発生した個人情報および重要データを、中国国内で保存しなければならない。業務の必要により、国外に提供する必要がある場合は、国家インターネット情報部門が国務院の関係部門と共に制定した規則に従って安全評価を行わなければならない。」と定められています。したがって、中国国内で収集した個人情報を国外へ持ち出す際には、審査等の制限を受けることがあることに留意する必要があります。

3.「電子商務法」の施行について
 2018年8月31日、現状混乱しているEC市場を整えるため、「電子商務法」が可決され、2019年1月1日から施行される予定です。同法は、中国国内のEC市場を規制する法律であり、同法により、消費者の個人情報を保護する義務、納税義務等これまで曖昧だったEC事業者の責任が明確化されたことに加え、EC事業者がこれら責任に違反した場合の罰則も設けられました。したがって、中国でEC事業を行う場合は、従前より慎重になる必要があると思われます。もっとも、同法は、中国の通販サイトで直接商品を販売する事業者及び中国におけるインターネットプラットフォーム運営企業等を規制する法律であり、中国現地の企業を通じて通販を行っている外国企業に対する影響は依然不明であるため、今後の動向に注目する必要があります。
以 上