ブリッジルーツの日本・中国・韓国見聞録

弁護士法人Bridge Rootsブリッジルーツ
中国人弁護士 厳 逸文

※本記事は亜州ビジネス2018年1月9日第1767号に掲載されたものです。

【第118回】中国における環境取り締りの大幅強化


 中国は急激な経済成長に伴い、大気汚染等環境問題が深刻化してきました。周知の通り、近年、中国は環境汚染の問題を解決するために、環境汚染規制を大幅に強化しました。環境法規制の強化は、現地の日系企業にも影響を与えていますので、今回は、中国の環境法規制の現状を紹介します。

一、 環境法制度の整備
 2015年1月1日より施行された新しい「環境保護法」をはじめとして、環境法制度に関し、一連の改革措置が実施されました。このうち、一番注目されるのが、2018年1月1日より施行された「環境保護税法」です。従来、汚染物を排出する企業は、汚染排出費を支払う義務がありましたが、同法の施行に伴い、汚染企業の汚染排出費の支払義務は環境保護税の納付義務に転換されました。環境保護税を従来の汚染排出費と比較しますと、基本金額自体はそれほど変わりありませんが、徴収管理の強化の面から見ますと、同制度の改革は、以下のように、企業に対し大きな影響を与えると思われます。

(1)法的根拠の明確化
 汚染排出費制度は行政機関の規則に基づく制度であるため、汚染排出費の支払いを遅延する、又は拒否する企業に対し、行政機関は、支払督促命令を発出する、又は少額な罰金を課す手段を通じてしか汚染排出費の支払いを監督することができませんでした。新制度においては、納税者が環境保護税の納付を遅延する場合又は脱税する場合、税務局は滞納企業に対し高額な滞納金を課すことができます。また、刑法に基づき企業の代表者に対し刑事責任を問うこともできるようになりました。

(2)徴収管理の強化
 汚染排出費は行政機関の規則に基づく制度であるため、環境保護局の徴収力は弱く、実務上、汚染企業は環境保護局との交渉により汚染排出費の減額を求めることもできました。また、汚染排出費を滞納する場合でも、少額な罰金しか課されないため、汚染排出費の支払いを無視する企業も少なくありませんでした。
 しかし、新制度では、環境保護局と税務局が共同管理・監督する体制になりますので、徴収管理が以前より厳しくなりました。新制度の下、上記のような減額交渉又は長期滞納が認められなくなります。

二、汚染企業に対する取り締まりの強化
1. 京津冀地域に対する大気汚染監察の強化
 2017年8月、中国の環境保護部、国家発展及び改革委員会、公安部等10部門は共同で、北京、天津、河南省(「京津冀地域」)に対する大気汚染管理の行動計画(以下「行動計画」という)を公布しました。同行動計画により、2018年までに、京津冀地域の汚染企業の名簿を作成し、これら汚染企業に対し、強力な取り締まりを行うことが宣告されました。
 上記取り締まり行動計画において、環境保護局等監督機関は、汚染企業に対し、環境保護法に基づき、①汚染企業の汚染源となる設備及び施設を差し押さえること(第25条)、②罰金を課すこと及び罰金滞納発生日の翌日から、その罰金額を基準として日割計算による罰金を徴収すること(第59条)、生産停止又は生産制限を命じること(第60条)ができます。更に、汚染企業が監督機関の処罰決定に従わない場合、企業の代表者に対し、15日間を上限として拘留を科すこと(第63条)、又は、刑法に基づき刑事責任(「刑法」第338条)を問うことが可能です。

2.工場移転の命令
 これまで中国の地方政府は、外資企業に進出してもらうため、積極的に都市内の土地を無料又は低額の借地料で提供しましたが、環境問題の深刻化に伴い、汚染物を排出する外資企業に対する規制も厳しくなりました。上海及び江蘇省、浙江省の一部都市は、都市中心部における工場の新築を禁止しました。また、地方政府が都市内の汚染企業に対し、都市内からの立ち退きを求めたケースも頻発しています。

3.特別期間中の営業停止命令
 国際会議等重要会議の開催期間中、大気を改善するために、地方政府は、汚染物を排出する企業に対し、一時営業停止命令を発出することもあります。

三、終わりに
 上記のように、中国の環境取り締りの強化は国内企業に止まらず、外資企業にも大きな影響を与えています。新制度の下、汚染物を排出する企業のコスト負担は増大すると思われますので、中国に進出予定の日本企業及び既に中国に進出している日本企業は、現地の環境法規制の改革に対応するために、社内の汚染防止対策を見直すことをお勧めします。

以 上