ブリッジルーツの日本・中国・韓国見聞録

弁護士法人Bridge Rootsブリッジルーツ
弁護士 神山 優一

※本記事は亜州ビジネス2017年10月16日第1712号に掲載されたものです。

【第112回】生涯弁護士の徒話「トラトラトラ!案件は進んでいるか!?」


◇ 長年、企業法務をやっておりますと、いつも社長さんや法務担当者さんにお話しする「お決まりの話」というものが自然とできてくるものです。今日もそんな十八番のうちの1つを。

◇ 例えば、先日、クライアントである株式会社一吉(ヒトヨシ/仮)さんからこんな相談がありました。「弊社が投資していた海産物の養殖のプロジェクトなのですが、なんと、実際にはプロジェクトそのものが存在していないかもしれないという謎の状況に陥っております。そこで、知り合いの投資関係のコンサル会社である闘士LAWコンサルタンツ(トウシロー・コンサルタンツ/仮)に相談したところ、『内容証明やら裁判やらをやってもこの手の事案には通用しない。ウチのほうで相手方と話して妥協点を探ってみたい。』とのことでした。確かに、ただでさえ多大な損害が発生する可能性が高いところに、高額の弁護士費用を払うのは泣きっ面に蜂ですし、裁判等で長期化するのも困るので、闘士LAWさんにとりあえず頼んでみようと思っていますが、いかがでしょうか。」とのご相談です。

◇ トラブルが発生すると、必ずと言っていいほど“おせっかい焼き”が登場してきます。それが善意からなのか、興味本位なのか、恩を売りたいのか、尊敬されたいのか、漁夫の利を得ようというのか、はたまた報酬目当てなのかは分かりませんが、昔の“村の長老”のような顔をして大岡裁きか特命係長のような紛争解決を試みます。こうした“おせっかい焼き”が行う紛争対応は基本的に調整と話し合いが中心となりますが、恋愛トラブルの間に仲介役が入るとかえって混乱することが多いように、(たまに上手くいくこともあるんでしょうが・・・)余計に状況が悪化したり、何も話が進まないで時間ばかりが無駄に経過したりする事態も少なくありません。

◇ 「上手に交渉して話をまとめる」とか「動かぬ証拠を突き付けて相手を追い詰める」とか「感情を逆なでせず、事件を大きくしないようにして解決する」などといったことを主眼とする紛争対応は、村の長老かコンサル気取りの素人の発想です。紛争処理のプロは、「今、行っている一つ一つの対応が確実に解決に向かっているものなのか?」を重視します。「文書で相手方に明確に請求を行い、期限までに必要な回答や支払い等がなければ裁判を提起し、公的機関により白黒をつける」という堅実で確実な紛争解決プロセスを柱とし、「より早く円満に解決するための話し合いや和解等」については、あくまでもそのプロセスの中において試みていくわけです。「上手な交渉」とか「動かぬ証拠」などは、結局のところ強制力がありません。強制力がないということは、運良く相手方が応じたり認めたりしてくれない限り、ただただ時間と労力だけがムダに垂れ流されるリスクが否定できないということです。とりあえず勝ち負けは別としても、紛争がゴール(解決)に向かって着実に前進するであろう“レール”を敷き、あとはその上にトロッコを走らせる。よりスピーディーに、あるいは円満に解決する手段を試みたりもするが、走り出したトロッコを止めたりはしない。これこそがプロの仕事なのです。

◇ 当職は、一吉さんに助言しました。「弁護士が入ることで相手方が硬直化し、素早い話し合いによる解決ができなくなる可能性は否定できないのかもしれません。ただ、紛争解決に向けたトロッコのレールを敷かないままでいたずらに話し合いや交渉等を続けることは、時間をムダにする可能性があるだけでなく、下手をすれば状況をより悪化させるリスクさえ孕んでいます(例えば、時間の経過の中で財産を隠されたり、当方の手の内を察知されたりすることなど)。それでも闘士LAWさんに賭けてみるかどうかは御社の経営判断ですが、少なくとも明確に期限を定めてその中で解決に至らない場合には直ちに堅実・確実な方法に切り替える、といった対応をオススメしておきます。なお、報酬目当てで紛争解決を請け負うような行為は、場合によっては弁護士法等に違反する可能性もありますので、これを助長することのないよう十分に注意してくださいね。」

じゃ、今日はこれで。