ブリッジルーツの日本・中国・韓国見聞録

弁護士法人BridgeRootsブリッジルーツ
弁護士 姜 成賢


【第111回】韓国における消滅時効

※本記事は亜州ビジネス2017年10月2日第1704号に掲載されたものです。

Ⅰ.はじめに
 債権法部分に関する民法改正案が衆議院及び参議院で可決された。この結果、日本民法が約120年ぶりに改正されることとなる。今回の民法改正案では、危険負担に関する部分も改正が行われるとされている。

 現行民法では、双務契約で契約が成立しているものの、一方の債務が債務者の責めに帰すことのできない事由により履行不能になった場合には、債務者主義(反対債務も消滅する)を原則としたうえで(現行民法536条1項)、特定物に関する契約(現行民法534条1項、535条)や債権者の責めに帰すべき事由による場合(現行民法536条2項)などに債権者主義(反対債務は消滅しない)を採用している。これに対し、改正民法では、特定物に関する契約において債権者主義を採用することの不合理性を踏まえ、現行民法534条及び535条を削除した。また、現行民法536条については、債権者が相手方の債務の履行不能を理由として債権者の反対債務を消滅させるためには、解除の意思表示をしなければならないことを前提とした形に、文言を修正している。
 本稿では、韓国における危険負担制度について紹介する。

Ⅱ.危険負担の内容
 韓国民法では、危険負担についての規定は、以下の2条のみである。

537条(債務者危険負担主義)

双務契約の当事者の一方の債務が当事者双方の責任なき事由にて履行することができなくなったときは、債務者は相手方の履行を請求することができない。

538条(債権者帰責事由による履行不能)

双務契約の当事者一方の債務が債権者の責任ある事由にて履行することができなくなったときは、債務者は相手方の履行を請求することができる。債権者の受領遅滞中において、当事者双方の責任なき事由により履行ができなくなったときも同様とする。

2 前項の場合において、債務者が自身の債務を免れたことにより利益を得たときは、これを債権者に償還しなければならない。


 まず、現行民法との大きな違いは、特定物に関する特別規定がないということである。この部分につき、具体的な記述のある文献等は見当たらなかったが、現行民法における特定物に関する契約の場合の規定に対する批判を踏まえてのことである可能性がある。いずれにせよ、上記の条文だけを素直に読めば、契約の目的物が特定物の場合であっても、その危険は原則として債務者が負う、すなわち、反対債権の給付は受けることができないという結論になりそうである。
また、韓国では、債権者の受領遅滞の場合において債権者主義を適用し、債務者が反対債権を受けるこ とができると明記している。現行民法においては、このような規定はないが、日本においても、受領遅滞(現行民法413条)があった場合には、債権者主義になるとされており、明文規定はないものの、韓国と同様の考えが採られている。

Ⅲ.まとめ
 以上のとおり、韓国では債務者主義を前提としつつも、債権者の責めに帰すべき事由によって生じた債務者の履行不能については、債権者主義にするという現行民法に比べればわかりやすい規定となっている。改正民法においても、現行民法534条及び535条を削除することにより、結果としては、韓国民法のように比較的シンプルな形での危険負担の条文となることが見込まれる。
以 上