ブリッジルーツの日本・中国・韓国見聞録

弁護士法人BridgeRootsブリッジルーツ
弁護士 姜 成賢


【第107回】韓国における消滅時効

※本記事は亜州ビジネス2017年8月7日第1666号に掲載されたものです。

Ⅰ.はじめに
 債権法部分に関する民法改正案が衆議院及び参議院で可決された。この結果、日本民法が約120年ぶりに改正されることとなる。今回の民法改正案では、消滅時効に関する部分も改正が行われるとされている。

 現行民法では、債権は10年間行使しないときは消滅するとされている一方で(現行民法167条1項)、改正民法では、債権は、①債権者が権利を行使することができることを知った時から5年間行使しないとき、または②権利を行使することができる時から10年間行使しないときは、時効によって消滅するとされている(改正民法166条1項)。つまり、主観的な起算点(権利を行使することができることを知った時から)の追加が大きな改正点といえる。また、現行商法では、商事債権については5年間(現行商法522条)、その他職業別に短期間の時効期間を別途定めている(現行民法170~174条)が、同規定は民法の改正と同時に削除されることになる。
 本稿では、韓国における消滅時効期間及び時効の援用についてのみ紹介し、最後に、韓国の消滅時効が問題となる場面について紹介する。


Ⅱ.消滅時効期間
 韓国民法では、現行民法と同様、民事債権は10年間行使しないときは消滅時効が完成するとされ(韓国民法162条1項)、また商行為による債権については、商法に異なる規定がないとき又は他の法令により短期の規定がないときは、5年間行使しなければ、消滅時効が完成する(韓国商法64条)。そして、「他の法令により短期の規定」が定められている場合としては、まず3年の短期消滅時効にかかるものとして、①利子、扶養料、給料、使用料その他1年以内の期間で定めた金銭または物件の支給を目的とする債権、②医師、助産師、看護師及び薬剤師の治療、勤労及び調剤に関する債権、③請負人、技師その他工事の設計又は監督に従事する者の工事に関する債権、④弁護士、弁理士、公証人、公認会計士及び法務士の職務に関する債権、⑤生産者及び商人が販売した生産物及び商品の代価などがある。また、1年の短期消滅時効にかかるものとして、①旅館、飲食店、貸席、娯楽場の宿泊料、飲食料、貸席料、入場料、消費物の代価及び立替金の債権、②学生及び就業者の教育、衣食及び留宿に関する校主、塾主、教師の債権等である。


Ⅲ.時効の援用
 日本民法では、時効の援用について、当事者が援用しなければ、裁判所がこれによって裁判をすることができないと規定され(民法145条)、時効の完成により、権利の取得や消滅という効果が発生するものの、裁判では当事者による訴訟上の主張が必要となるとされている。一方で、韓国民法では、日本民法のような時効の援用に関する規定はなく、「消滅時効が完成する」という文言の解釈が問題となる。判例は、消滅時効の完成により当然に権利が消滅するという絶対的消滅説を採用しており(大法院1966年1月31日宣告)、時効の援用については、弁論主義の原則上、消滅時効の利益を受ける者が当該利益を放棄せず、実際に訴訟において権利を主張する者に対抗して消滅時効の利益を受ける旨を抗弁として主張しない以上、その意思に反して裁判をすることができないという意味に過ぎないとしている(大法院1979年2月13日宣告)。


Ⅳ.韓国の消滅時効期間が問題となる場面
 たとえば、日本企業を売主、韓国企業を買主とした売買契約が締結され、韓国の企業が売買代金を支払わず、消滅時効が問題となる場合、日本法又は韓国法のいずれを適用することになるか。改正民法であれば5年、韓国民法であれば3年を経過すると消滅時効により債権が消滅する可能性がある。
 日本の通則法によれば、消滅時効は、債権の運命の問題にほかならないのであるから、その成立及び効力に関する準拠法は、債権関係の準拠法、すなわち債権自体の準拠法によるべきものとされている(徳島地判昭和44年12月16日)。このため、通則法7条~9条により判断していくこととなり、当事者間が契約当時に準拠法を選択していた場合には、その国の法により判断していくこととなる。

以 上