ブリッジルーツの日本・中国・韓国見聞録

弁護士法人Bridge Rootsブリッジルーツ
中国人弁護士 厳 逸文

※本記事は亜州ビジネス2017年7月24日第1656号に掲載されたものです。

【第106回】中国法における製造物責任~販売者の責任について~

1. 中国法における製造物責任
 日本において、中国人観光客の日本製商品に対する「爆買い」現象が落ち着き、新たな商機を見出そうとする日本企業様から、「日本で日本製の商品を買ってもらうだけではなく、日本製の商品を中国にいる方にも売りたいと考えています。中国で販売を行うに際して、法的に注意すべき点があれば教えてください。」といった相談を受けることがあります。今回は、中国においてビジネスを展開するに際しての注意点の1つである「中国法における製造物責任」について解説します。一番注意すべき点は、中国法上の製造物責任の責任主体が日本法とは異なる点です。

2. よくあるご質問

(1) 中国法上の製造物責任について、製造者のみならず販売者も責任を負わなければならない場合があると聞きましたが、本当でしょうか?

 結論から申し上げますと、中国においては、販売者も消費者に対し製造物責任を負う場合があります。
 中国の製造物責任を定める「中華人民共和国製品品質法」(以下「品質法」といいます)及び「中華人民共和国権利侵害責任法」(以下「不法行為法」といいます)各第42条において、「(前段)販売者の過失により製品に欠陥が生じたために他人に損害を与えた場合、販売者は不法行為責任を負わなければならない。(後段)販売者が欠陥製品の製造者もサプライヤーも明示できない場合、販売者は不法行為責任を負わなければならない」と定められています。同規定の前段により、販売者は、製品の欠陥につき過失がある場合、製造物責任を負うことになります。更に、同規定の後段より、販売者が欠陥製品の製造者又はサプライヤー(供給者)が誰かを明示できない場合、販売者は、欠陥につき過失があるか否かを問わず、消費者に対し製造物責任を負うことになります。以上のような販売者の製造物責任については、次の表のようにまとめることができます。

条    件

販売者の製造物責任

販売者に過失あり

販売者が過失なし

製造者又は責任あるサプライヤーを明示できない

製造者又は責任あるサプライヤーを明示できる

×


 また、「品質法」及び「不法行為法」第43条において、消費者、製造者、販売者の間での請求及び求償の相手方について定められています。第43条によると、①販売者は、過失があるか否かを問わず、損害賠償責任を負う、②販売者は、消費者に対し損害賠償を行った後、製造者に責任がある場合には、製造者に対して求償請求を行う、③製造者が消費者に対し損害賠償を行った後、販売者に責任がある場合には、販売者に対して求償請求を行うという法的構造になっています。販売者の責任が重すぎると感じられるかもしれませんが、この背景には、商品取引関係の中で弱い立場にある消費者の権利を保護する目的があります。当然、中国においても、この規定は販売者にとって不公平であるという見解もありますので、裁判上では、販売者に全額賠償させるのではなく、過失割合により販売者の損害賠償責任を判断する傾向があります。

(2) 最終販売業者ではなく、中間販売業者でも製造物責任を負うのでしょうか?

 「弊社(日本企業)は、中国の通販会社に商品を販売した後、通販会社から中国の消費者に商品を販売していますが、この場合、弊社も消費者に対し、製造物責任を負うべきでしょうか?」という質問をされたことがあります。中国の判例により、「販売者」については、「最終販売業者」のみならず、「中間販売業者」も含まれますので、「中間販売業者」も製造物責任を負わされます。したがって、上記ケースにつき、消費者は自己の選択により、①最終販売業者である通販会社、②中間販売業者である当該日本企業、及び③製造業者のいずれに対しても、損害賠償責任を追及することができます。 

(3) 販売者の製造物責任を排除することはできるでしょうか?

 「販売者は、製造業者又は消費者との契約書において、自己の製造物責任を免除する旨を規定すれば、責任を排除することができるでしょうか?仮に排除できない場合、他の責任回避方法はありますでしょうか?」という質問をされたことがあります。この問題に対し、製造物責任に関する規定は強行法規ですので、当事者の間で販売者の責任を排除する旨の合意が達成した場合でも、この責任を免れることができません。但し、販売者の責任を軽減するために、①商品を卸す際、商品に製造業者を明示し表示するように工夫すること、②上流の企業(製造業者又は上流の販売業者)から商品を購入する際、製造物責任に関する責任分担条項を契約書に規定すること、及び③生産物賠償責任保険に加入し、製造業者に保険料を負担させる方法を提案できます。

3. さいごに
 中国の膨大な消費市場は確かに魅力的ですが、中小規模の販売業者にとって、商品を販売するに際して製造物責任まで負わせられることは、過大な負担とも言えますので、中国に向けて商品を販売する際は、このリスクを慎重に検討する必要があるでしょう。
以 上