ブリッジルーツの日本・中国・韓国見聞録

弁護士法人BridgeRootsブリッジルーツ
弁護士 姜 成賢


【第99回】韓国が国際仲裁におけるアジアのハブに?

※本記事は亜州ビジネス2017年4月18日第1591号に掲載されたものです。

 2017年4月7日~13日にかけ、オーストリアのウィーンにおいて、第24回Willem C. Vis International Commercial Arbitration Moot(通称、「Vis Moot」)が開催され、世界76か国から342大学が参加した。Vis Mootは、架空の2つの異なる国にある企業間の物品売買に関する模擬仲裁の大会であり、各大学が申立人又は被申立人の代理人として、手続面及び実体面に関する主張・反駁を行うものであり、毎年香港及びウィーンにて大会が行われている。日本においては、8校がこの大会に取り組んでおり、2017年3月4日には同志社大学今出川キャンパスにおいて、第10回国際商事模擬仲裁大会日本大会が開催されている。

 そもそも、仲裁とは、当事者の合意(仲裁合意)に基づき、第三者(仲裁人)の判断(仲裁判断)による紛争解決を行う手続であり、裁判外手続(ADR)の1つとして位置づけられている。日本では裁判が主流となっているが、仲裁を選択するメリットとしては、特に、秘匿性を保持したいケース、専門的な知見を要するケース、さらに、日本でいえば、日本の裁判所が行った判決が承認執行されない国の企業との国際紛争のケースといった場合が考えられる。

 日本と比べ、世界各国では、自国の仲裁振興が活発に行われている。理由としては様々なものが考えられるが、主に、仲裁振興を産業政策と捉え、仲裁振興が都市を国際的なビジネスの拠点に成長、発展させるために必要であると捉え、また、仲裁振興それ自体が経済効果を生み出すという考えに基づくものであるようである。このような仲裁振興のため、各国では、官民一体の協力体制が築かれている。

 韓国も従来、国際仲裁分野への取り組みが活発に行われている。国際仲裁では、世界各国が仲裁に関し可能な限り統一したルールを制定できるよう、国際連合国際商取引法委員会(UNCITRAL)がモデル法を提供しているが、韓国は、1999年にUNCITRALモデル法(1985年制定版)に準拠した仲裁法を制定している(なお、日本において同様の仲裁法が制定されたのは、その4年後の2003年のことである。)また、2016年には、同モデル法(2006年制定版)に準拠した形で仲裁法を改正している。また、韓国の主な仲裁機関である大韓商事仲裁院(KCAB)では、国際仲裁規則(2016年改正版)を設けており、現在、同院ホームページにおいて、英語及び韓国のみならず、中国語、日本語、ドイツ語及びベトナム語で入手が可能である。

 次に、韓国では2013年にはソウル国際紛争解決センター(SIDRC)を開設し、ソウルで行う仲裁の利便性を高めている。また、同センターは、各国の仲裁機関と協力し、仲裁をSIDRCに誘致することや、仲裁に関する講義を行うことで、国内及び国外に対し、自国の仲裁振興の役割も担っている。このような効果をあり、KCABにおける、2015年の新規仲裁受理件数は、413件に達した。

 韓国を国際仲裁における仲裁機関や仲裁地として設定するメリットは何であろうか。筆者としては、特に中国との関係では、中立した第三国として韓国の仲裁機関を選定することも選択肢としてあり得ると考えている。国際取引の場合には、互いの中立性の観点から第三国を仲裁地に選択するという手法がとられることがあるが、韓国は、日中間の取引ではその第三国として、大きな役割を担うことが可能である。

 今後の韓国の国際仲裁に関する取り組みを注視していきたい。
以 上