ブリッジルーツの日本・中国・韓国見聞録

弁護士法人BridgeRootsブリッジルーツ
弁護士 姜 成賢


【第95回】韓国のオープンカジノ

※本記事は亜州ビジネス2017年2月20日第1551号に掲載されたものです。

 現在、韓国には合計17個のカジノが存在する。その内訳は、外国人専用カジノが16個、内国民出入許可カジノ1個である。韓国では、国民が出入りできるカジノ(いわゆる「オープンカジノ」)を増やそうというという議論がなされている。そこで、本稿では、韓国におけるカジノ法制度及びオープンカジノ増設の動きに伴う議論について概括する。

1.外国人専用カジノに関する法令
 カジノ事業の関する主な規定は、「観光振興法」(1975年12月31日法律第2878号、最終改正2016年2月3日法律大13958号)である。同法は、カジノ事業は文化体育観光部から事業許可を受け営業をすることができるとしている(観光振興法5条1項)。カジノは、原則として、①国際空港や国際旅客船ターミナルがある特別市・広域市・道・特別自治道にある、若しくは観光特区にあるホテル業施設又は大統領令で定める国際会議業施設、又は②韓国と外国を往来する旅客船のいずれかに設置することができる(観光振興法21条1項)。このようないわゆる進入規定のほか、同法には、営業規定(同法23条、25条、26条、28条)、調整規定(30条)等が規定されている。そして、カジノ事業者は、内国人(海外移住法2条に基づく海外移住者は除く。)を入場させる行為をしてはならないと規定し(同法28条1項4号)、これが外国人専用カジノと言われる根拠であると思われる。

2.内国民出入許可カジノに関する法令
 この内国民の出入が許可されているカジノであるカンウォン・ランドは、「廃鉱地域開発支援に関する特別法」(1995年12月29日法律第5089号、最終改正2014年11月19日法律第12844号)に基づき2000年に開場された。同法は、石炭産業の斜陽化によって立ち後れた廃鉱地域の経済を進行させ、地域間の均衡ある発展と住民の生活向上を図ることを目的としている(同法1条)。カンウォン・ランドは2000年に開場されて以降、2回の期間延長の結果、2025年まで内国民の出入が可能となっている(同法附則1995年12月29日第5089号②(改正2005年3月31日、2012年1月26日))。

3.新たなオープンカジノ設置の動き
 現在、韓国では、セマングン(新萬金)地域の長期開発と活性化のため、複合カジノリゾートの導入が必要であるとし、同地にオープンカジノを設置しようという動きがある。同事業により3万人の雇用人員を増やすことができるとの意見がある。また、釜山市も同じく、オープンカジノの導入の声明を挙げている。オープンカジノの導入に対しては賭博中毒等の副作用の憂慮が挙げられたが、カンウォン・ランドの入場料である9000ウォンよりも高い10万ウォン程度を入場料として、月間年間の出入人数を制限するなど、内国人の規制を強化すれば足りると主張している。しかしながら、このような意見に対しては、どれほど規制を強化してカジノを運営したとしても、結局は内国人の懐をつくことになるとし、釜山では競馬や競輪が運用されており、警戒が強まっている中で、オープンカジノまで許容すれば、釜山は賭博都市になってしまうとの指摘もある。

4.最後に
 韓国では、カジノ誘致は観光都市政策としての役割が大きいが、オープンカジノの設置により雇用数の確保なども注目されている。一方で、上記のようにカジノ中毒者に対する懸念も大きい。また、日本や台湾、フィリピン、ベトナム、ロシア等の近隣諸国がカジノ政策に乗り出していることからも、自国のカジノ政策をどのようにしていくのか、今後の対応が注目される。
以 上