ブリッジルーツの日本・中国・韓国見聞録

弁護士法人BridgeRootsブリッジルーツ
弁護士 姜 成賢


【第91回】韓国の裁判制度

※本記事は亜州ビジネス2016年12月26日第1515号に掲載されたものです。

 現在、韓国における朴槿恵大統領の弾劾訴追案を憲法裁判所にて審理してもらう動き注目されている。韓国では、日本と異なり、憲法裁判所という名称の裁判所が設置されている。この憲法裁判所をはじめ、韓国の裁判制度は日本のそれとは類似している部分もあれば、異なる部分も存在する。そこで、今回は、韓国の裁判制度を日本の裁判制度と比較しながら概括し、韓国の憲法裁判所の概要について簡単に紹介する。

1.裁判機関の種類
 韓国の憲法では、「法院」(第5章)、「憲法裁判所」(第6章)という構成をとっている。そして、「司法権は、法官によって構成された法院に属する。」(憲法101条1項)と規定している一方で、憲法裁判所にはそのような規定が存在せず、憲法裁判所は、法院とは異なる独立した組織である。

2.法院
 韓国の法院の種類は、大法院、高等法院、特許法院、地方法院、家庭法院及び行政法院の6種類からなる(法院組織法3条1項。なお、憲法では、軍事裁判を管轄するため、特別法院として軍事法院を置くことができるとしているが(憲法110条1項)、ここでは説明を省略する。)。韓国でも、日本と同様三審制が採用されており(第一審、第二審が事実審であり、第三審が法律審。)、一般的には、地方法院、高等法院及び大法院で行われることとなる。そして、専門的な事項については、特許法院、家庭法院、行政法院にて審理されることとなる。
 日本においても、専門的な事項については、知的財産高等裁判所や家庭裁判所といった裁判所が設置されているが、韓国の行政法院のような裁判所は存在せず、行政訴訟を中心に取り扱う部署を有する裁判所が一部存在するにとどまる。

 日本の裁判所では採用されていない韓国の民事訴訟システムとして、電子訴訟システムがある。韓国の法院では、2011年5月より民事電子訴訟システムを採用している。この電子訴訟システムを利用する場合には、当事者及び代理人は、大法院の電子訴訟ホームページを通じ、電子文書の送達を受け、内容を確認することができる。電子訴訟システムを訴訟で利用するかについては、原告及び被告の同意が必要である。電子訴訟システムを利用する場合には、相手方から電子文書が掲載された旨が通知が、当事者が同システムに入力した電子郵便住所には電子郵便で、携帯電話番号にはメッセージで送られてくる。電子文書は、送達を受けた者が掲載された電子文書を確認した時に送達されたものとみなすとされている。ただし、その掲載事実を通知した日から1週間が経過した日に送達したものとみなすとされている。

3.憲法裁判所
 憲法裁判所は、①法院の提請による法律の違憲の有無の審判、②弾劾の審判、③政党の解散の審判、④国家機関の相互間、国家機関と地方自治体及び地方自治団体相互間の権限争議に関する審判、⑤法律が定める憲法訴願に関する審判について管掌する(憲法111条1項)。憲法裁判所は、法官の資格を有する9人の裁判官によって構成され、裁判官は大統領が任命する(同条2項)。また、この9人の裁判官のうち、3名は国会から選出される者、3名は大法院長が指名する者を任命する(同条3項)。
 朴槿恵大統領の弾劾に関する事項は、上記憲法裁判所の管掌する事項のうち、②弾劾の審判に当たる。憲法裁判所にて弾劾の決定をするときは、裁判官6人以上の賛成がなければならない(憲法113条1項)。
以 上