ブリッジルーツの日本・中国・韓国見聞録

弁護士法人Bridge Rootsブリッジルーツ
中国人弁護士 厳 逸文

※本記事は亜州ビジネス2016年10月17日第1468号に掲載されたものです。

【第86回】中国における外商投資企業の設立は許可制から届出制へ

 2015年9月3日、中国の全国人民代表大会常務委員会は、中国における外商投資企業に関する法律の土台となる「外資独資企業法」、「中外合弁企業法」、「中外合作経営企業法」(以下「三資企業法」と総称する)及び「台湾同胞投資保護法」の修正案を可決した。同修正案により、外商投資企業の設立及び経営事項の変更につき、従来の事前審査許可制は事後届出制へ変更された。
 商務部は前述の法改正に応じて、同日「外商投資企業設立及び変更届出管理暫定弁法」(以下「届出管理暫定弁法」という)の意見募集稿を公布し、本年10月8日、届出管理暫定弁法が実施された。
 今回は、上記法改正の背景及びポイントを解説する。

1.今回の法改正の背景
 近年、中国政府は、外商投資家に便宜な投資環境を整える目的で、外商投資に関する法規制を改革してきた。改革措置を試みるため、3年前から、上海を始めとして、広東、天津、福建で自由貿易試験区が設立された。自由貿易試験区において、行政機関の介入を抑えるための法体制が構築された。例えば、ネガティブリストが採用され、ネガティブリスト範囲外の外商投資企業の設立につき、事前審査許可制ではなく、事後届出制が実施された。3年間の試験により、上述の制度が投資を促す効果が確認されたため、全国範囲で実施することとなった。
 自由貿易試験区における制度を全国範囲で実施させるにあたり、三資企業法を統括する「外国投資法」を制定するというのが当初の計画であったが、外国投資法の採択に対し、議論が一致できなかったため、今回の法改正が先鞭として行われた。

2.今回の法改正のポイント
(1)事前審査許可制から事後届出制への変更
 今回の法改正において、最も注目されたのは、外商投資企業の設立や経営事項の変更につき、許可制から届出制へ変更した点である。この改正は、30年以上実施してきた事前審査許可制に終止符を打ったため、中国の外商投資環境に対し大きな影響を与えた。
 届出管理弁法により、参入特別管理措置を実施する範囲(ネガティブリスト)外の外商投資企業の設立及び変更につき、事前に商務局に申請し許可を取得する必要がなくなり、会社を設立又は変更した後に、届出をすればよくなった。
 ネガティブリストの範囲につき、商務部及び国家発展及び改革委員会は、届出管理暫定弁法が実施された同日に、「外商投資産業指導目録(2015年訂正版)」における制限類、禁止類及び一部(株式及び経営者に関する制限がある産業)の奨励類の分野は、ネガティブリストに属すると公表した。

(2)オンライン届出システムの導入
 今回の法改正により、オンライン届出システムが導入された。外商投資企業の設立や経営事項の変更は、オンラインでも申請できるようになったため、手続きの簡素化が大いに進められた。

(3)信用データベースの構築
 今回法改正のもう一つの注目点は、外商投資企業の信用状況を反映する信用データベースを構築することである。商務部は、外商投資企業に対する監督・検査に当たって、外商投資企業が届出をしない場合や、虚偽の情報を届け出する等届出制度に違反する行為を発見した場合、当該企業に対し是正を命じても期間内に是正しなければ、3万元以下の罰金を科すことができる。また、この処罰決定は、信用データベースで公表することになる。

 今回の法改正は、中国政府が外資参入規制を緩和するための重要な一歩であると思われるが、これまで中国において、地方における新制度の実施は法改正より遅れ、地方の実務運営が新制度と整合しないという現象がよく見られる。今回のような大きな法改正に対し、各地方商務局や工商行政管理局等がいかに対応するかに注目が集まるだろう。
以 上