ブリッジルーツの日本・中国・韓国見聞録

弁護士法人Bridge Rootsブリッジルーツ
代表弁護士 橋 本 吉 文
執筆協力 中国人弁護士 厳 逸文

※本記事は亜州ビジネス2015年10月26日第1231号に掲載されたものです。

【第81回】中国の対日投資ブームを迎え

 10月の中国国慶節休暇期間、中国人観光客の日本での「爆買い」がテレビや雑誌で話題となった。実際、中国企業や中国人個人の間では、日本の電化製品や日常用品等の購入のみならず、日本における不動産投資や起業等にも非常に関心が高まっている。
 過去数十年、日本企業は、安い人件費と巨大な市場に惹かれ、中国へ進出したが、近年、中国経済成長の失速と人件費の上昇が原因で、中国から撤退するケースが多い。それとは逆に、近年、中国企業の日本進出という現象が多くみられるようになった。今回は、中国企業、中国人個人の日本進出について解説する。

1.中国国内の政策誘致
 過去10年くらいの間、中国政府は、「走出去」と呼ばれる戦略を掲げ、中国企業の対外投資を誘致してきた。しかし、中国の対日投資は、数こそ増加はしているが、投資規模は依然として日本企業の対中投資の規模を大幅に下回っている。その理由は、中国の厳しい為替規制及び対外投資に対する法制度の不備が挙げられる。2014年10月、中国企業の海外投資を管理する法律である「海外(境外)投資管理弁法」が改定された。2009年の旧「海外(境外)投資管理弁法」では、対外投資は「許可制」とされていたが、改定により「届出制中心原則」が確立された。また、2014年より、個人の海外投資への途を開いた「境内居民が特殊目的会社による投資・融資及び逆方向投資に対する外貨管理問題に関する通知」や「クロスボーダー担保外貨管理規定」等外貨管理法令も公布された。
 これら法整備による対外投資手続きの簡素化及び為替制限の緩和によって、中国企業及び富裕層個人の海外投資に対する意欲が大幅に上昇したのである。

2.対日投資の魅力
 中国における海外投資に対する規制緩和の一方、日本側も、2013年6月に閣議決定された「日本再興戦略」に基づき、国家戦略特区の設立等の措置により、外資の導入を推進している。中国における物価の上昇に加え、円安が進展することにより、中国投資家は、日本の不動産等の価格に魅力を感じ、住宅の購入やホテル・ゴルフ場の建設等に注目している。なお、中国では、土地を私有することができず、使用権しか認めないため、土地の所有権も取得できる日本の不動産は魅力的である。また、今年3月、法務省は、日本国内法人の代表者のうち少なくとも1名は日本に住所を有しなければならないという居住者要件の撤廃を発表した。これにより、日本に住所を有しない外国投資者も、日本において独自で会社を設立することができるようになった。さらに、今年4月、入国管理及び難民認定法の改正により、起業家を主な対象とする4ヵ月間の「経営・管理」在留資格の新設や起業者の在留資格申請条件の緩和等措置が行われた。この新在留管理制度の施行により、起業する外国人を受け入れやすくなった。
 日本は外資導入に対し、上記のような積極的な姿勢を示しているため、中国投資家の日本進出に対する関心もますます深まっていくと思われる。

3.中国の対日投資ブームを迎え
 今後、日本へ進出する中国投資家はますます増加することが予想される。したがって、これまで中国に投資した経験がなく、あるいは、中国に全く関心を持ってこなかった企業も、日本国内において、否が応でも中国企業や中国人個人を取引相手とする機会が増えてくるであろう。日本企業にとっては、この中国の対日投資ブームに対していかに適切に対応していくかが重要な課題になると思われる。また、日本へ進出する中国企業は、日本の先端技術や市場環境を狙っていることが多いため、これら資源を共有し、共同発展の新しい道を探る必要もでてくるだろう。
以 上