ブリッジルーツの日本・中国・韓国見聞録

弁護士法人Bridge Rootsブリッジルーツ
代表弁護士 橋 本 吉 文
執筆協力 中国人弁護士 厳 逸文

※本記事は亜州ビジネス2015年8月31日第1195号に掲載されたものです。

【第77回】中国における企業間貸し付けの解禁

 日本において、企業間貸し付けは資金調達の一般的な手段である一方、中国においては、周知のとおり、企業間の貸し付けが禁止されていたため、実務上、企業は、金融機関による「委託貸し付け」という形で、金融機関、貸し付け企業及び借り入れ企業の三者間契約により、間接的な資金融通を行っていた。
しかし、2015年8月6日、最高人民法院が公布した、同年9月1日より施行される予定の「民間貸借案件の適用法律に係る若干の問題に関する規定」(以下「本規定」という)により、企業間貸し付けが可能になった。今回は、本規定の施行にあたり、企業間貸し付けに関する法規を解説する。

1.企業間貸し付けの解禁
最高人民法院が1991年に公布した「貸借案件の審理に係る若干意見」により、公民(自然人)間、公民及び法人その他組織間の貸借が認められる一方、法人間の貸し付けは認められなかった。しかし、近年中国における経済の発展とともに、企業の流動資金に対する需要が益々増加しているため、上記法規制は企業間の貸し付けを抑えきれず、逆に、迂回方法(委託貸し付け等)、更に、違法な方法(架空取引等)により企業間の貸し付けは盛んに行われてきた。このような背景により、企業の資金調達の難問を解決するために、本規定は、企業間貸し付けに対し、一定の制限を設け、その効力を認めるようになった。

2.留意点
 企業間の貸し付けが解禁されたが、無制限に認められるわけではない。企業間の貸し付けに対し、下記制限が設けられていることに留意する必要がある。
(1)目的制限
 本規定第11条の「法人間、その他組織間及び相互間において生産、経営のために締結した民間貸借契約について、契約法第52条、本規定第14条に定められた事情があるときを除き、民間貸借契約が有効であると当事者が主張する場合、人民法院は支持しなければならない」という定めにより、企業間の貸し付けにつき、「生産、経営のため」という目的が必要であると解されている。また、企業は、「生産、経営のため」という目的を欠如し、貸付を反復継続して行う場合には、「業」としての貸し付けに該当し、金融管理に関する法令に違反する恐れがある。 

(2)効力制限
 本規定第14条により、次の場合、貸借契約の効力が認められない。
  •  金融機関の信用貸付資金を不正に取得し、高利で借主に転貸して、且つ借主が事前に知り、または知るべきであった場合 
  •  その他企業から貸借または本事業組織の従業員から募集して取得した資金を高利で借主に転貸して利益を取得し、且つ借主が事前に知り、または知るべきであった場合
  •  借主が借入金を違法・犯罪活動に用いることを貸主が事前に知り、または知るべきであったにも関わらず借入金を提供した場合 
  •  公序良俗に違反する場合
  •  その他法律、行政法規の強行規定に違反する場合

(3)利息制限
 従来は、貸付利息の上限は中国人民銀行の同種同期間の基準貸付利息の4 倍とされていた。しかし、本規定の第26条により、利息の上限は年利率24%とされた。年利率24%~36%の部分については、貸付側の利息支払請求を認めないが、借入側が既に支払った場合、貸付側は返還する必要がないとされた。36%を超過する部分は、無効とされた。
                                           ○認める × 認めない

年利率

利息に関する約束がある場合の利息支払請求

利息に関する約束が不明の場合

利息に関する約束がない場合の利息支払請求

借入側の貸付側に対する利息返還請求

24

人民法院が、貸借契約の内容に基づき、現地又は当事者間の取引方式、取引習慣、市場利率等要素を考慮し、利息を決定する

×

×

24%36%

×

×

36%

×



以 上