ブリッジルーツの日本・中国・韓国見聞録

弁護士法人Bridge Roots ブリッジルーツ
上海事務所 顧問 古島忠久

【第64回】「体制の変更」

※本記事は亜州ビジネス2015年3月2日に掲載されたものです。


 最近、中国進出企業の中国からの撤退、または業務縮小に伴い一部撤退との話がチラホラ聞こえてきます。皆様も報道等でご存知の方も多いでしょう。弊所もそのような相談を受けるようになりました。相談される方も撤退や縮小を検討するに至るまでにもいろいろ理由があるようです。全面的な撤退とはせず、規模を縮小したい、との話もあります。そこで今回は縮小等での現体制の変更の方法をあくまで一つのご参考までにお話しします。

 例として、製造業として約15年前に中国に進出し、自社で土地使用権を取得し、工場を建設し運営してきた企業は、当初の予定では運営後、数年後に生産を拡大していく予定だったので、土地、工場とも当初の生産規模より大きめのものを用意した。しかしその後も生産量は殆ど変わることなく更に近年は業界の景気があまり良くないとのことで、生産規模の縮小を検討するようになった。そうなると、現状でも少し大きめの工場なので生産場所、事務所とも余剰空間があり、更に縮小となると半分位が余剰空間になってしまうし、今の場所は交通の便もあまり良くないので、いっその事、土地・建物とも売りたい、との考えを持つようになった。しかしある程度の生産も続けなければならないが、あまり真面目でない従業員も少なからずいるので、これを機にそのような従業員も一掃したい、どうしたら良いか?更に後々は生産よりも商社機能の方が大きくなる可能性が高く、これもどうしたら良いか?なかなか全部を解決するのは難しいですが、そこで一つの案として、現状では工場を売りに出したところで直ぐに買い手が見つかるのは難しい、と感じており、またある程度の生産を継続するのであれば、先ずは別の場所で生産規模に合った大きさの貸工場(レンタル工場)を借りて、その場所で新会社を設立し、その新会社で継続する予定の生産を行なうようにし、その新会社へは必要な人員だけ入れる。そして今の会社を経由し販売する。(そうすることによって顧客からは何の変更もないことになる)また今の会社は土地・建物が売却できれば、その後、交通の便の良い場所で商社機能が主な会社へ登記内容の変更(経営範囲、及び税金関係)をしたらどうか?

 そうすると問題として、体制の変更に伴い、確かにある程度の出費(人員の整理に掛かる費用も必要)と労力が発生しますが、過去の膿を出し切るにはある程度は仕方がないでしょう。これなら新しい生産場所はあくまで別会社なので、新会社が生産できる環境が整うまで、今の工場で生産を続けることができ、新会社の生産に切り替えるときにもスムーズに移行(必要な従業員が新会社へ行かない場合があっても、前もって新会社で準備期間が可能になる)できるでしょう。そして商社機能の会社として今の会社(登記内容の変更が必要な場合有)を活用すれば、後々商社業務が主な業務になってもその会社で対応することが可能です。

 他にもいろいろな方法はあるでしょうが、その企業の方針に合った方法を弊所は一緒に検討致します。
以上