ブリッジルーツの日本・中国・韓国見聞録

弁護士法人BridgeRootsブリッジルーツ
李 武哲(弁護士)
執筆協力:金 佑樹(弁護士)

【第46回】韓国における離婚制度

※本記事は亜州ビジネス2014年6月16日第897号に掲載されたものです。

1.韓国の離婚事情
 昨今、日本における離婚率は高いといわれるが、韓国における離婚率は日本よりも高く、アジアでもトップクラスとなっています。封建的な家族主義の国である韓国がこのような状況であることは意外に思われるかもしれません。厚生労働省が発表している資料によると、人口千人当たりの離婚率は、日本が1.84であるのに対し、韓国は2.3と高い水準となっているのです。このように韓国における離婚率が高くなっている背景には、社会の西洋化のほか、女性の社会進出や経済危機以降の社会における男性の地位の変化などがあるといわれています。
 今回は、韓国における離婚の法制度をご紹介した上で、渉外家事事件の手続きについて考えてみたいと思います。

2.韓国の裁判離婚
 韓国民法において定められている裁判上の離婚原因は、その多くが日本法と同様のものとなっています。韓国民法840条は、①配偶者に不貞行為があったとき、②配偶者が悪意で他の一方を遺棄したとき、③配偶者又はその直系尊属から著しく不当な待遇を受けたとき、④自己の直系尊属が配偶者から著しく不当な待遇を受けたとき、⑤配偶者の生死が3年以上明らかでないとき、⑥その他婚姻を継続することが困難な重大な事由があるときに、家庭裁判所に離婚を請求することができるとしています。このうち、③、④の尊属との関係を離婚原因とする規定は日本法にはないもので、韓国の封建的な家族主義の面が垣間見えます。
 また、以上の離婚原因があったとしても、これを原因として離婚を請求することには時期的な制限が設けられています。韓国民法841条は、夫婦の一方に不貞行為があったとしても、これを知ったときから6カ月、これがあったときから2年を経過したときには、離婚を請求することはできないとされているのです。このような規定は日本法にはないもので、韓国における離婚ではこの点にも注意しなければなりません。

3.渉外家事事件
 例えば、韓国人の夫と日本人の妻が婚姻し韓国に住んでいましたが、夫の暴力等が原因で妻が日本に帰国し、夫との離婚を望んでいるという場合、どのような手続きを踏めばよいのでしょうか。
 妻としては、すでに帰国していることなどから、日本で裁判を行うことを望むでしょう。この点について、日本の判例では、原則として被告の住所地に国際裁判管轄を認めるが、相手から遺棄された場合、相手が行方不明の場合、その他これに準ずる場合には、例外的に日本の裁判所に管轄を認めるとしています。実際の裁判例では、救済の必要性や被告の住所地で裁判をすることに対する事実上の障害を考慮して、日本の裁判所に管轄を認めるものがありますので、今回の事例でも日本の裁判所に管轄が認められる可能性はあると考えられます。
 では、日本で裁判をするとして、その場合に適用されるのは、日本の法律でしょうか、それとも韓国の法律でしょうか。準拠法については、「法の適用に関する通則法」によって定められています。今回の事例ですと、「夫婦の一方が日本に常居所を有する日本人であるとき」(同法27条但書)に該当すると考えられますので、日本法が準拠法となります。
 以上のように、渉外家事事件を考える上では、どちらの国の裁判所で裁判ができるのかという国際裁判管轄の問題と、どちらの国の法律が適用されるのかという準拠法の問題を十分に検討することが不可欠です。
以 上