ブリッジルーツの日本・中国・韓国見聞録

著:秋山理恵(弁護士)

【第43回】「転ばぬ先の労働法」 

※本記事は亜州ビジネス2014年5月7日第869号に掲載されたものです。

―第2回:休日に酒気帯び運転で事故を起こした職員に対する懲戒免職処分の取消が認められた事案(神戸地方裁判所平成25年1月29日判決)―

1 事案
 Y市の消防職員として勤務していた原告Xは,休日に,高校の同窓会と二次会に出席後,原動機付自転車で帰宅する途中に転倒するという自損事故を起こして負傷し,救急搬送されました(鎖骨・肋骨の骨折で2か月の自宅療養が必要とされました)。Xは,病院で警察官から飲酒検査を受けたところ,呼気からアルコールが検出されたため,道交法違反で,罰金20万円の略式命令を受け,免許取り消し2年となりました。
 Xが消防職員であったことからか,Xの飲酒運転の事実は新聞各紙で報道されました。
Y市は,Y市の懲戒処分に関する基準に従い,Xを懲戒免職処分としました。そのため,Xが当該処分は,社会通念上著しく苛酷であるとして取消を求めて訴え提起しました。

2 裁判所の判断
 裁判所は、
  • Xの酒気帯び運転は,非番の日に職場とは無関係である同窓会に参加した帰路に発生した私生活上の行為であったこと
  • Xは当時管理職でもなく,その社会的責任,行為の社会に与える影響は相対的に少ないこと
  • 事故時の状況は酒気帯び運転であることのほかに,速度違反等の事実は認められなかったこと
  • 物損,人損等の第三者に対する具体的な被害も生じなかったこと
  • Xには本件処分を受けるまで,懲戒処分歴,前科前歴もなかったこと
  • Xは事後の事情聴取等には素直に応じ,飲酒運転をしたことは一貫して認め,謝罪,反省の気持ちを表したこと
  • 非違行為後のXの態度は,非難すべきところはないこと
の各事実を認定した上で,第三者に具体的な被害を生じさせていない本件酒気帯び運転によって直ちに免職とするのは,非違行為と懲戒処分の均衡を欠くきらいがあるといわざるを得ず,本件懲戒免職処分は違法であるとして取り消しました。

3 ポイント
 本件は,休日に私生活上で起こった酒気帯び運転を原因とする懲戒処分の効力が争われた事案です。
 労働者の私生活上の行動であっても,これが企業秩序に直接に関連するものや,企業の社会的評価を害する行為であれば,懲戒権行使の対象となり得ます(最高裁昭和49.2.28判決)。懲戒は訓戒等から解雇まで様々ありますが,その中でどの処分を選択するかについては,当該労働者の前後における態度,懲戒処分等の処分歴,社会的環境,選択する処分が他の労働者及び社会に与える影響等諸般の事情を総合考慮した上で,企業秩序の維持確保という見地から相当と判断した処分を選択するべき(最高裁昭和49.2.28判決)とされています(なお、本件はXが公務員であったことからこれと異なる枠組みが採用されていますが、基本的には上記最高裁判決と同様の考え方です)。

 
4 転ばぬ先のチエ
 休日の飲酒は日常の束縛から開放される楽しいひととき。大きな気持ちになって、少しくらいなら大丈夫、と飲酒運転して事故を起こしてしまったら、楽しい休日が悲しい休日になってしまいます。本件では懲戒解雇処分が取り消されていますが、仮に人身事故を起こしてしまった場合等は、私生活上の出来事であったとしても、懲戒解雇になる可能性もあり得ます。
「飲んだら乗るな」を忠実に、楽しい休日をお過ごしください。
以 上