ブリッジルーツの日本・中国・韓国見聞録

弁護士法人Bridge Rootsブリッジルーツ
代表弁護士 橋 本 吉 文

【第37回】出資持分を合弁相手もしくは第三者へ売却する方法による撤退方法

※本記事は亜州ビジネス2013年12月30日第787号に掲載されたものです。

 前回、事業の終了を前提として解散・清算する方法による撤退方法について説明したが、今回は、事業の継続を前提として出資持分を合弁相手もしくは第三者へ売却する撤退方法について解説する。

1.手続きの流れ
 手続きの大まかな流れは、ⅰ)他方合弁当事者の同意→ⅱ)董事会決議→ⅲ)設立認可機関の認可(商務部門)→ⅳ)工商行政管理部門での登記となる。
  
2.問題点及び注意点
 (1)他方合弁当事者の同意について
    一方の合弁当事者が第三者に出資持分を譲渡する場合、他方の合弁当事者は譲
   渡持分について優先買取権を有しており、また合弁当事者が第三者に譲渡する条
   件は、他方合弁当事者に譲渡する条件より有利であってはならない(中外合弁企
   業法実施条例20条第2項、3項)。
    他方合弁当事者は、第三者への出資持分譲渡について同意を与えず、また、優
   先買取権も行使しないということは許されず、優先買取権を行使しない場合は第
   三者への譲渡に同意したものとみなされる(会社法72条2項、同法218条)。

 (2)董事会決議について
    持分譲渡に関する董事会決議は、出資者の名称、出資額等の定款の記載を変更
   する必要があるため、全員一致決議事項である。
    この全員一致決議をスムーズに取得するためには、予め合弁契約及び定款に、
   「当事者の一方の第三者への持分譲渡に同意した場合、もしくは優先買取権を
   行使せずに当事者の一方の第三者への持分譲渡に同意したものとみなされた場合、
   他方当事者は自己が派遣した董事に董事会で譲渡を承認させる義務を負う。当該
   董事が董事会において譲渡承認をしなかった場合、当該董事を派遣した当事者は
   持分譲渡をしようとする当事者に対して、違約金として●●万元を支払わなければ
   ならない。」旨の具体的規定を定めておくとよい。

 (3)持分譲渡価額について
    出資持分譲渡による撤退の場合、譲渡先に足下を見られ、相当に安い価額で譲
   渡せざるを得ないという場合が多い。但し、あまりにも安いと日本において寄付
   行為と認定され多額の税負担が生じたり、あるいは株主から取締役の善管注意義
   務違反に基づく損害賠償責任を追及されるおそれもあるので、注意が必要である。

3.まとめ
 中国からの撤退方法の中では、雇用と税収確保が維持されるため地方政府の面子が立つ出資持分方式が最も手続きがスムーズに進むと思われる。もっとも、外資出資者に対して徴税できる最終チャンスとばかりに、税務当局が過去に遡って税務調査をしてくるため、常日頃から適正な税務処理を心がけておくことが重要であろう。

以  上