ブリッジルーツの日本・中国・韓国見聞録
【第25回】中国人従業員は女性の方が優秀?

弁護士法人Bridge Rootsブリッジルーツ
代表弁護士 橋 本 吉 文

※本記事は亜州ビジネス2013年7月15日第672号に掲載されたものです。

1.中国では女性従業員の活用が鍵
 中国では日本と異なり、企業の中枢で活躍している女性も多い。特に経理関係の業務では、男性がさまざまな不正をしがちであるのに対し、女性は真面目に勤務してくれるため、中国に進出している日系企業でも、経理担当者は女性である場合が多い。
 また、女性は地域に根付こうとする意識が強く、働きやすい環境であれば長期間働いてくれる(定着性が高い)。この点も、独立志向が強く、チャンスがあればすぐに転職してしまう男性従業員との大きな違いである。
 したがって、中国で成功するためには女性従業員をどのように活用するかを考えることが肝要である。そのためには、まずは女性従業員保護に関する法規を理解しておかなければならない。

2.女性の労働権益の保障
 (1)女性の労働権益については、1992年に施行され2005年8月に改正された主席令第58条の「婦女権益保障法」で規定されている。同保障法では、男女は平等な労働権利を有し(第22条)、同一労働同一賃金(第24条)、人事考課における男女平等(第25条)、セクハラの禁止(第40条)が規定されている。
 また、同保障法第26条では、以下のように女性従業員の妊娠~授乳期間の特別保護について詳しく規定している。
  a.生理期間中:高所、低温、冷水並びに3級以上の労働の禁止。
  b.妊娠期間中:妊娠7ヶ月以上の女性従業員の時間外勤務と深夜勤務の禁止、並びに勤務中に休憩を与えること。
  c.出産休暇:産前15日、産後75日、合計90日の出産休暇を与えること。難産の場合は15日間の追加。
  d.授乳期間:1歳未満の乳児について、1勤務時間に2回、それぞれ30分の授乳時間を与えること。
 (2)かつて中国では歴史的な儒教の精神により男尊女卑であったが、新中国建国以来、「天の半分を女性が担う」との思想が普及し、男女同権が徹底された。現在中国では、結婚後の夫婦共働きが常識となり、家事も夕食の支度を含めて夫婦が分担するのが当然である。また、仕事上の宴会以外、従業員は真っ直ぐに帰宅し、日本のように退社後、男性従業員同士で酒を飲んで仕事上の愚痴を言い合うというような習慣はない。
 
3.その他女性従業員の労働保護に関する諸規定
 (1)1988年9月に施行された国務院令第9号「女性従業員労働保護規定」により男性よりも身体的に劣る女性の労働保護を規定している。同規定第5条では、女性が担当する業務として、鉱山の坑内労働や国の規定する4級の肉体労働への従事を禁止している。
 (2)1990年1月に労働部が施行した(労安字[1990]第2号)の「女性従業員の労働禁止範囲に関する規定」では、女性従業員の労働禁止範囲並びに妊娠計画中と妊娠中の従業員の労働禁止の範囲について、重労働並びに接触する化学薬品について規定している。

4.女性従業員は男性従業員以上の戦力?
 以上のように、中国では男女同権が徹底され、女性は同一労働同一賃金の原則の下で、男性と差別なく働いている。また、男性従業員も優秀な女性上司であれば、抵抗なく部下として働くため、女性従業員を差別することなく、その能力に応じて責任を持たせれば立派に仕事を果たしてくれる。
 中国に進出している日系企業も、日本における女性従業員に対する偏見?を是正し、女性従業員を男性従業員と同様に活用することをお勧めする。

以  上