ブリッジルーツの日本・中国・韓国見聞録

【第14回】韓国家族法にみる家族制度
 

弁護士法人Bridge Rootsブリッジルーツ

弁護士 李   武 哲

 

※本記事は亜州ビジネス2013年1月5日第507号に掲載されたものです。

 

1.はじめに

 第2回の記事でもお伝えしたように、日本と韓国の法制度は多くの分野でよく似通っていますが、細かな規定には両国の歴史や慣習を反映した違いを見つけることができます。現在では、数度に渡る民法改正によってその多くが削除・改正されていますが、改正前の韓国家族法は、旧来の伝統的家族制度を色濃く反映したものとなっていました。

 今回は、韓国の伝統的家族制度を考える題材として、韓国における家族法をご紹介したいと思います。
 

2.韓国の家族法

 韓国の家族制度は、中国から伝来した男系血族の同族集団の組織法である「宗法制」と旧来の朝鮮の伝統的家族制度との融和によって確立されたものであるといわれています。このような理念を持つ家族制度を基礎に韓国の家族法は制定されたため、韓国の家族法には父系血統主義などその理念が具体化された規定が数多くありました。

 例えば、韓国では、姓は父系血統を対外的に表章するものとされていることから、血統が一生を通じて変わることがないように、姓も一生を通じて変わることがないとされています。これを姓不変の原則といいます。この原則の当然の帰結として、韓国では夫婦別姓の制度が取られています。

 また、韓国家族法には戸主制度というものが存在し、戸主は家族の代表として祖先祭祀の主宰者たる地位につくものとされ、長男が戸主の地位を第一順位に相続することとされていました。長男は、戸主相続権を放棄することも認められていませんでした。これも、祖先の祭祀や血統の承継を具体化する目的で定められたものといえます。

相続を例にみても、改正前の韓国家族法では、被相続人が夫と妻の場合とで相続人の範囲が異なるものとされていました。夫が亡くなった場合、妻は亡夫の親と同順位で相続人となる(=妻と亡夫の親とで遺産を分割する)とされていたのに対し、妻が亡くなった場合には、夫は亡妻に親がいても亡妻の遺産を単独で相続できるとされていたのです。これは、祖先からの財産が他族に帰属するのを望まなかった封建時代の影響と考えられます。
 

3.韓国民法の改正

 このような韓国の伝統的家族制度を反映した家族法に対しては、憲法の規定する人間の尊厳や両性の平等に反するものであるとの批判があるところでした。そこで、現在では、数度にわたる民法改正の際にその多くが削除・改正されました。先ほど例に挙げた戸主承継制度についても、2005年の民法改正の際、家族関係における男女平等の観点から、廃止されています。

 また、改正前の韓国家族法で規定されていた「同姓同本不婚制」についても、1997年の韓国憲法裁判所の違憲判決を受けて失効することになりました。韓国では、「姓」とともに、始祖の発祥地の地名である「本」というものを姓に付着させて代々承継されていくこととなっており(例えば、始祖が「金海」発祥の金氏である場合、「金海金氏」と呼びます。)、姓と本が同じであれば、同一の「宗」と呼ばれる同族組織に属すると認められるとされています。そして、改正前の韓国家族法では、同姓同本の男女間では、実際の血縁関係の有無に関わらず婚姻することはできないとされていたのです。

 ちなみに日本でも、摂津源氏や大和源氏、河内源氏など、姓にその発祥地を付して呼称することがありますが、それが家族法に組み込まれることはありませんでした。これは日本と韓国の血族に対する意識の違いの顕著な例と言えるでしょう。
 

4.おわりに

 以上のように、伝統的家族制度を反映した規定は、その多くが時代の流れに伴い、削除・改正されました。これまでの家族制度の基礎となった家族に関する国民の観念や血統主義に根を下ろした韓国社会がこれからどのような変化をみせるのか、大変興味深いところです。


 以 上