【第13回】中国進出に対する事実上の障壁!?

 

弁護士法人Bridge Rootsブリッジルーツ

代表弁護士 橋 本 吉 文


※本記事は亜州ビジネス2012年12月17日第537号に掲載されたものです。
 
 

1.サービス業の中国進出について

 1990年代は、コスト削減目的での生産型企業の中国進出が多かったが、近時は「世界一の中国市場」を目指して、サービス業の中国進出が著しく増えている。北京、上海、広州等の大都市に行くと、日系の飲食店、スーパー、アパレルショップ、美容院、エステサロン、物流会社、設計会社等々、日本でよく見かける会社名やロゴマークを数多く目にすることだろう。

2001年12月1日、中国はWTOに加盟し、流通、金融、電信通信、建設等のサービス業の自由化を約束した。

 これに伴い、2004年6月、「外商投資商業領域管理弁法」が施行され、これまで出資比率、地域等に制限があった流通サービス業について、外資100%出資が可能となり、中国市場での自由度ははるかに大きくなった。

 しかし、法律上は外資の出資が許されその出資要件を満たしていても、中国許認可機関から認可が下りないという「事実上の障壁」もあるのが現実だ。
 

2.中国へのサービス業進出の事実上の障壁について

 まず、巨大な中国市場でECサイトを立ち上げ、インターネット販売を行いたいという企業は非常に多い。しかし、中国でインターネット販売を行うためには、経営性ICPライセンスを取得しなければならない(但し、自社製品のインターネット販売は除く)。この経営性ICPライセンスは、①外資の出資比率が50%を越えてはならない、②全国範囲で行う場合は企業の登録資本金は1000万元を下回ってはならない等の要件はあるものの、これらの要件を満たしていても中国政府は外資企業に経営性ICPライセンスを事実上発行していない。

 次に、高品質のMade In Japanの化粧品を中国に輸出し、販売したいという企業も多い。中国の化粧品市場は毎年10%以上の伸び率で成長しており、化粧品業界にとっては非常に魅力的な市場である。しかし、日本の化粧品を中国で販売するためには、製品毎に食品薬品監督管理部門(SFDA)において、輸入化粧品衛生許可証を取得しなければならない。ところが、現時点では、許認可担当者から、「書類に不備が多い。」等の説明をされ拒否されることが多く、この輸入化粧品衛生許可証を取得することは非常に困難となっている。

 また、中国で建設工事業を営むためには、特級から3級までの4等級からなるいずれかの等級ライセンスを取得しなければならない。かつて日本から中国に進出したゼネコンの中には上記いずれかの等級を取得した企業もあったが、現在では外資企業が建設工事ライセンスを取得することは著しく困難となっている。

 このように、中国には法律上は要件を満たせば取得できるはずの許認可・ライセンスが、事実上取得が困難という業種もあることを認識しておく必要がある。さもなければ、中国でインターネット販売会社や化粧品販売会社、建設工事会社を立ち上げたものの、上記経営性ICPライセンスや輸入化粧品衛生許可証、建設工事ライセンスを取得することができず、何年もの間、オフィスの家賃や人件費等のコストを負担せざるを得ない事態に陥ることもあるからだ。

                             以  上