【第9回】販売業者も製造物責任を負わされる!?

 

弁護士法人Bridge Rootsブリッジルーツ

代表弁護士 橋 本 吉 文


※本記事は亜州ビジネス2012年10月8日第487号に掲載されたものです。
 
 

1.中国食品の危険性に関する報道について

  中国製冷凍餃子から殺虫剤が検出された事件、中国産ウナギから発がん性物質が検出された事件、段ボール片と豚肉を混ぜた「段ボール肉まん」事件等々、ここ数年、中国食品の危険性についての報道が多数なされている。

特に有名になのが、2008年、中国河北省でメラミン入り粉ミルクを飲んだ乳幼児29万4000人が腎臓などに異常をきたし、少なくとも6名が死亡した事件である。この事件では、メラミン入り粉ミルクを製造・販売した被告ら2名に死刑が、その他19名の製造・販売関与者に死刑執行猶予、終身刑、2年~15年の禁固刑が言い渡された。また、損害賠償請求を求めて集団訴訟が提起される等、民事上の責任追及も実施された。メラミンを多量に摂取すると、ぼうこう結石や腎不全を起こす可能性が高まるが、たんぱく質含量を多く見せかける偽装が可能となるため、悪徳食品業者がメラミンを混入するという事案が後を絶たなかったようだ。

  このように、企業の製造物の欠陥により生命・身体・財産上の損害を被った場合、被害者(又は遺族)は企業に対し損害賠償を求めていくことになる。中国では、2009年12月26日、「権利侵害責任法」(日本でいう不法行為法)が公布され、翌年7月1日に施行されたが、同法の中に規定されている製造物責任に関する内容は日本と異なる点も多い。

 

2.中国の製造物責任の特色について

  中国と日本の製造物責任とで最も大きく異なる点は、中国では製造業者だけではなく、販売業者も責任主体となる点だ。被害者は製造業者のみならず販売業者にも全額の損害賠償請求が可能で、しかも販売業者も無過失責任を負うと解釈されている。このように販売業者にも無過失責任を負わせた趣旨は、①消費者が有名なスーパー等で商品を購入するのは、販売者に対する信用・安心があるからであって、販売業者はそのような信用・安心を保持する責任がある、②経済のグローバル化により、一般消費者が製造者に対し損害賠償請求をすることは極めて困難であるとの考えからだ。

  次に、日本と異なり、「製品に欠陥が存在することを明らかに知りながら製造、販売を続け、他人の死亡又は健康に対する重大な損害をもたらした場合は、権利を侵害された者は相応の懲罰的賠償を請求する権利を有する。」(権利侵害責任法第47条)と規定されている。したがって、中国における製造業者、販売業者は、被害者が実際に被った損害額以上の賠償金を支払わなければならない可能性もある。

  さらに、「製品の流通後に欠陥の存在が発見された場合は、製造者及び販売者は速やかに警告、リコール等の救済措置を講じなければならない。速やかに救済措置を講じることができず、又は救済措置が十分でないために損害が生じた場合は、権利侵害責任を負わなければならない。」(同法第46条)と規定されている。

  「中国は世界一の市場だから、中国に進出して物をバンバン売ろう!」などと安易に考えるのは危険である。中国における販売業者は、日本と異なり無過失の損害賠償責任を負い、リコール制度の強制、懲罰的賠償責任を負担させられる可能性もありうるということを十分に認識しておかなければならない。

以  上